忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

林田力の後ろでドアがバタンと

男性は扉を開けた。暗く冷たい空気が微風となって流れ出た。最初に目に飛び込んできたものは剥がれかけた塗装であった。色褪せた壁のくすんだ色。通された先は会議室であった。顧客を迎え入れる応接室ではなく、文字通り会議室である。一輪の花も一枚の絵も飾っていなかった。年代物の調度品も置かれていない。殺風景なただの会議室である。殺風景な部屋が林田力と東急リバブル・東急不動産の関係を余計に寒々としたものにさせたことは当然である。
全てが外界との接触を拒絶する冷ややかさに満ちていた。これでは万が一助けを求めたくなったならば大声で叫ぶしかない。室内は乾いて埃っぽい空気に満たされていた。壁や天井にへばり付いたニコチンが暗くて沈滞した雰囲気をダメ押ししていた。誰かが椅子を引きずったり咳をしたりするだけで、かなり反響する部屋である。林田力の後ろでドアがバタンと閉まった。
会議室は縦長の部屋で、中央に長机を設置し、左右に椅子が並べてあった。出入口から見て奥の側には既に四人の男性が座っていた。出入り口から遠い側が上座であり、来客はそちらに通し、社内の人間は出入り口に近い側に座るのがビジネスマナーである。
しかし、四人とも上座から動こうとせず、林田力を下座に着席するよう薦めた。この時点で東急不動産が相手に敬意を全く払う気がないことは明白であった。悪徳不動産営業には常識も社交儀礼も欠けていた。
「人との出会いを大切にし、相手を敬うという気持ちは、もともと日本人に備わっている寛容の心です」(出光昭介「同門会法人設立三十周年記念茶会に寄せて」同門2007年2月号26頁)。
東急リバブル・東急不動産従業員には日本人に備わっている寛容の心が根本的に欠けていた。代わりに常人の数倍ほど厚い面の皮と太い神経を持ち合わせていた。協議が最初から非友好的な雰囲気で始まったことは当然の成り行きであった。相手の自尊心を傷つけ、怒らせて自制心を失わせることで、協議を有利に進めようとの作戦であった。
挨拶もなければ、コーヒーの一杯も勧められなかった。但し、しばらく経過してから紅茶が出てきた。薄く、冴えない色をした紅茶は少しも美味しそうには見えなかった。渋谷東急プラザの椅子は嫌になるほど座り心地が悪かった。ここは敵地であった。
http://hayariki.net/109/109burei.htm

PR

この記事にコメントする

お名前
タイトル
メール
URL
コメント
絵文字
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
パスワード